※本記事は人材紹介サービス「CAREEPOOL(キャリプール)」(運営元:ドリームインキュベータ)からの転載記事です
転職先にベンチャー企業が視野に入ってくると、今大手企業で働いている人は、そもそも自分はベンチャー企業に向いているか?ということが気になってくると思います。
どんな人にベンチャー企業は向いているのでしょうか?そもそもベンチャー企業に向き、不向きはあるのでしょうか?
今回は、人のタイプを「攻めることが得意なオフェンスタイプ」と、「守ることが得意なディフェンスタイプ」の二つに分類したうえで、ベンチャー企業への向き、不向きを考えていこうと思います。まず2つのタイプの特徴ですが、ざっくりと以下のように定義します。
《オフェンスタイプ》
・自己主張が強く、個人プレーが得意
・新しいことへのチャレンジが得意
・考えるより、まず動いてみる
《ディフェンスタイプ》
・協調性が高く、チームプレーが得意
・今あるものの改善や効率化が得意
・動く前に、綿密に計画や準備をする
この2つのタイプを見て、どちらがベンチャーに向きそうでしょう?なんとなくオフェンスタイプかなと思われた方が多いのではないでしょうか?私も転職する前、そのように考えていました。
実際、大企業からベンチャー企業に転職して数年働いてみても、やっぱりそうだなという思いを強めています(オフェンスタイプとディフェンスタイプのどちらが良いという話ではなく、ベンチャーに向くのはどちらかという話です)。
なぜ、オフェンスタイプがベンチャー企業に向いているのか。一番の大きな理由は、大手企業とベンチャー企業の組織や業務範囲の違いです。
大手企業は組織で役割分担が明確であり、それぞれの業務もフローが整備されたものばかりです。それに比べてベンチャー企業は、やり方や進め方、担当者がわからないといった仕事がたくさんあります。オフェンスタイプの人は、このような、しっかりと仕事の進め方が決まっておらず、自分で切り開いていかねばならない環境の方が合っていると思います。
逆に、ディフェンスタイプの人は、役割分担や業務フローに沿ってきっちり仕事をこなすことに長けています。決まった持ち場できっちり仕事をしたいディフェンスタイプの方にとってベンチャー企業の環境はかなりのストレスを感じると思います。
そして、大きな理由のもう一つは、ベンチャー企業がチャレンジしやすい(攻めやすい)環境だということです。
何か新しいことをやろうとした時に、長い承認フローを通すためにたくさんの説明や会議を要するのが大手企業です。ベンチャーはそのあたりが身軽ですし、むしろ事業拡大に向けてチャレンジすることが急務です。
チャレンジが求められ、かつチャレンジしやすい環境であることが、オフェンスタイプの方が向く理由です。
しかし、ベンチャー企業も攻めだけが必要なわけではありません。その企業の成長フェーズによっては、守りの導入や強化が強く求められます。まず予備知識として、ベンチャー企業の成長フェーズを簡単にお伝えします。
1. シード
事業を立ち上げる準備段階です。ビジネスは構想段階で、メンバーは起業家一人もしくは数名といった規模感です。
2. アーリー
事業立ち上げ直後から軌道に乗るまでの数年間を指します。従業員規模は10名前後で売上は伸びつつあるものの利益は赤字であることが多いです。
3. ミドル
事業が軌道に乗り始めた時期。従業員規模は20〜50名程度。売上があがるにつれ従業員も増えてくるため、少しずつ組織を整える必要が出てきます。
4. レイター
事業が安定し、株式上場を検討するフェーズ。売上高は数十億で従業員規模も50〜100名程度となる。上場に向けて収益の拡大と共に安定化が求められます。
このように、ベンチャーはフェーズによって規模感や求められることが変わってきます。
ディフェンスタイプが活躍できるのは、後半のフェーズに入っているベンチャーです。詳しく説明していきます。
上記の通り、ベンチャー企業は後半のフェーズになればなるほど、安定して収益を出せる体制を整える必要が出てきます。そしてその体制強化の大きな柱は組織化です。
なぜ組織化が必要なのかといえば、前半フェーズの多くのベンチャーは、数名の創業メンバーや一部の能力が高い社員が売上を支えている場合が多く、その人が抜ければ会社が傾くといっても大げさではない状況にあるからです。
そのような属人的な稼ぎ方から、創業メンバー以外でも活躍できる、組織的な稼ぎ方に変えていくために組織化が求められるのです。
ちなみに私の会社は先日上場をしましたが、私が入った当時は上場を目指した体制強化の真っ只中でした。その真っ只中で、「組織化」を目指して以下のような取り組みを行ってきました。
・業務のルールやフローの整備
・枠割分担の整理と分業化による効率化
・マネージャー増員による組織態勢の強化
・人材育成態勢の強化
私が入社した当時は、上記取り組みが進んでいなかったので、仕事を覚えるのも進めるのも一苦労でしたが、組織化の取り組みが進んだ今では、新卒や中途の新規メンバーでも比較的スムーズに戦力化できるようになってきています。
このような「組織化」の過程を実際に経験して感じたのは、この過程で大企業出身のディフェンスタイプの人がすごく重宝されるということです。理由は二つあります。
一つ目は、大企業の大きな組織で働いた経験がかなり役に立つということです。大企業にいた頃は既に組織があったので、それを当たり前のものとして捉えていました。
ベンチャー企業に入って組織化する立場になってみると、大企業の組織というのは既に安定して効率化が進んだ、成長過程にあるベンチャーが目指すべきモデルケースとして見ることができます(真似してはいけない反面教師としての一面もありますが)。そのモデルケースを知っていることは、後半フェーズのベンチャーで働くうえで大きな強みになります。
二つ目は、この時期のベンチャー企業は、大手企業と比較して「組織化」という仕事を得意とする人が少ないということです。役割分担や業務フローをしっかりと規定し、チームプレーを推進していくのは、ディフェンスタイプの人が得意な領域です。
しかし、初期のベンチャーは攻めてなんぼですので、オフェンスタイプの人が中心なのですね。そのため、この時期のメンバーにディフェンスタイプの人が少ないのだと思います。
自分がディフェンスタイプだと思う方は、レイターフェーズのベンチャー企業に転職するとすごく重宝されると思いますよ。
ベンチャーへの向き不向きを、オフェンスとディフェンスという観点で考えました。どのフェーズのベンチャー企業にも向くのは、オフェンスタイプの人です。
しかし、組織化が求められるレイターフェーズのベンチャー企業では、ディフェンスタイプの大企業出身者が重宝されると思います。
これから転職を考える際は、自分のタイプとベンチャー企業のフェーズを意識してみると、自分のタイプに合った転職先が見つかるのではないでしょうか?
第1話 ベンチャー企業への転職をおすすめする3つの理由
第2話 ベンチャー企業への転職で失敗しない「お金」の考え方
第3話 自分はベンチャー企業に向いているか?適性を考える
第4話 ベンチャーへの転職前に解消すべきギャップ(前編)
第5話 ベンチャーへの転職前に解消すべきギャップ(後編)
第6話 大企業とベンチャー企業、それぞれの良い部分
第7話 ベンチャー転職の面接で気をつけるべきこと(前編)
第8話 ベンチャー転職の面接で気をつけるべきこと(後編)
第9話 転職活動で迷ったら、論理だけでなく感性に頼ろう
第10話 転職活動で失敗しないための周囲との関わり方
取材者・平重 克樹 文・ 大久保 崇
提供元・CAREEPOOL powered by DIMENSION