※本記事は人材紹介サービス「CAREEPOOL(キャリプール)」(運営元:ドリームインキュベータ)からの転載記事です
今や、いわゆる大手企業や大企業と呼ばれる会社で働く人でも、転職や副業など今後のキャリアについて考えることは当たり前になってきています。しかし、名のある安定した企業で働いている人ほど、いきなり転職先にベンチャー企業を選択するのは不安なのではないでしょうか?
私は、新卒から12年勤めた社員1万人越えの超大手企業から、社員100名超のベンチャー企業へ転職しました。その経験から、キャリアアップを目指すなら転職先にベンチャー企業をおすすめする理由をお伝えしていきます。
「倒産しないか不安」「事業や組織が安定していないのではないか」
このように、大手企業からベンチャー企業への転職を不安に感じる主な理由は、ベンチャー企業の不安定さにあるのではないでしょうか?ぶっちゃけますと、大手企業に比べればベンチャー企業はそれはもう不安定です。
売り上げ目標を大きく達成する期もあれば、大きく達成しない期もあります。また、業務フローも細かく整備されていないため、進め方がわからない仕事や誰がやるのか決まっていない仕事があるのは日常茶飯事です。
しかし私は、大手企業の安定しているが故の息苦しさや働きにくさも知っています。特に大企業病としてよく言われる「縦割り組織」や「意思決定の遅さ」は、企業活動を安定させるために、組織の細分化や個別最適化を進めた結果生まれたものです。
私は、ベンチャーに転職して働いて行くうちに、組織や仕事が不安定だからこそキャリアアップにつながるメリットがたくさんあると感じるようになりました。その理由を大きく3つにわけてお伝えします。
大手企業ではポスト不足によりマネージャー手前の30代社員があふれています。私も前職では、35歳でマネージャーになりましたが、他の企業にいる友人の話を聞くと、40歳になってようやくというところも少なくないようです。
昇進のチャンス=空いているポストの数という理屈で言えば、ポスト不足に悩む多くの大手企業は昇進のチャンスが少ないと言えます。
一方でベンチャー企業も湯水のごとくポストがあるわけではないですが、大手企業のような閉塞感は感じません。これには3つの理由があります。
一つ目の理由は、企業の成長にともないポストが増えていくからです。
ベンチャー企業はこれから成長する企業ですので、事業拡大や人員増に伴い当然ポストも増えていきます。ちなみに、私が今いる会社の所属組織では、私が入社時に1人だったマネージャーが、2年たった現在ではなんと5人に増えています。これは事業や組織が成熟した大手企業ではなかなかないことだと思います。
二つ目の理由として、ベンチャー企業はマネージャークラスでも人材が流動的なのでポストが空くことが挙げられます。これも、終身雇用が前提の大手企業ではなかなか見られなかった光景です。
最後に、三つ目の理由は、何歳になったらマネージャーという暗黙のルールがなく、若いうちから抜擢されやすい雰囲気があることです。
私が務める会社は、ベンチャーにしてはマネージャー登用がさほど早くないと思いますが、それでも20代後半のマネージャーは普通にいます。
しかし冒頭にもお伝えした通り、大手企業は早くても30代半ばのところが多い上、大きな組織ゆえ例外がなかなか許されないので、優秀だからといって早期の抜擢もほぼありません。
このように、ベンチャー企業は事業や組織が不安定だからこそ、ポストが増えたり空いたりする可能性(=昇進のチャンス)が多いのです。もちろん、ベンチャー企業のポジション競争が楽だというつもりは全くありませんが、そもそもポストが足りない大手企業より、チャンスは多いことは間違いなく、これが転職先にベンチャーをお勧めする一つ目の理由です。
いくらポストがあっても、成果を出さないことには昇進できません。私がキャリアアップにベンチャー企業をおすすめする2つ目の理由は、転職者にとってベンチャー企業は大手企業より成果が出しやすい環境だと思うことです。
これは、大手とベンチャー両方で働いた私の実感ですが、転職者が大手企業で大きな成果を出すにはかなりの時間がかかると思います。その理由は、大手企業で成果を出すには習得に時間のかかる特殊なスキルが必要だからです。そのスキルは「社内人脈、社内ルールへの精通、それに基づく社内調整能力」です。
このスキルが必要な理由は、大企業特有の、巨大でかつ縦割な組織構造にあります。
私がいた前職もそうでしたが、大きな企業は安定した組織運営のために、組織を細かく分割して個別最適化をはかっています。それにより、組織を跨いだ意思決定や意思統一がとても難しくなっているのですね。
組織を横断するような大きな成果を挙げようと思えば、各組織のキーマンと多くつながりそれぞれの組織事情や暗黙のルールを理解し調整するという能力がどうしても必要になります。
ちなみに、大きな企業でも組織が縦割り化していない所もあるでしょう。しかし、組織の縦割り化は、企業が大きく成長する過程で一般的に生じるものなので、ある一定以上の大きさの企業であれば、程度の違いこそあれ似たような状況だと思ってよいのではないでしょうか。
この能力はもちろん一朝一夕では身につきません。それなりの期間とジョブローテーションによる複数部署の経験を経て培われていきます。もちろん、社会人経験がある分、転職者は新入社員と比較すれば身につけるスピードは早くなっているかもしれませんが、そうは言っても習得に時間がかかるスキルであることは変わりません。
そう考えると、大企業から大企業への転職は習得が一番大変なスキルを捨て、再びそのスキルを再構築する必要がある、大変な選択なのかもしれないとすら思います。
さて、一方のベンチャー企業は、ほぼこれと逆の状況です。組織も細分化されていなければ、個別最適化もさほどされていません。先にも述べたように、それによって「誰がやるべき業務がわからない」とか、「フローが決まっていない業務が山ほどある」といった、不安定な働き方を強いられるデメリットはあります。ですが、組織をまたいだ業務調整に手間取ったり、意思決定のために色々な関係者を巻き込むといった手間は圧倒的に少なく済みます。
そのため、何か改善提案する際も、会社が今以上に成長するかもしれない、少しでも利益が増えるかもしれないという内容であれば、別の担当から反対されたり協力してもらえなかったりすることは、あまりありません。
もっといえば、オフィスでいつ社長に声をかけてもいい状況なので、いざとなれば直接提案したり話してみたりすることもできます。つまり、組織が大きく縦割りであるがゆえに、成果を出すためのチャレンジに、習得に膨大な時間のかかる特殊スキルが必要な大手企業と比較して、組織が粗く不安定なベンチャー企業は圧倒的にチャレンジしやすい環境だということです。(成果を出せるかはまた別の話ですが)
ここまで、「キャリアアップ=昇進」として話をしてきましたが、経歴を高めるという観点で言えば、自分の専門性を高めることもキャリアアップにつながります。ベンチャー企業では、この専門性を高めるための職務経験を、大手企業より積みやすいと感じます。
さきほどからお話している通り、大手企業は組織が縦割りです。そのため、各部署や課が担当する仕事は一連の仕事の中のかなり細かい「一部分」であることが多いです。また専門性が必要な仕事をグループ会社や外部企業に業務委託し、プロパー社員は社内の調整業務に時間を割くケースも多い。そのため、どうしても経験できる仕事が限定的かつ社外で通じる専門性が身につきにくくなる傾向にあると思います。
ただし、大手企業は扱っている事業は本当に幅広く、ジョブローテーションで様々な仕事を経験できるので、意識を高く持って自ら専門性を身につけようとする人は、広く深い経験ができる環境だとも言えます。
対するベンチャー企業は扱う事業は狭いですが、組織が細分化されていない分、幅広い業務範囲を経験できます(やらざるを得ないともいいます)。また、外部に業務委託をすることもそれほどないので、仕事を通して自らの専門性を高めることができます(高めざるを得ないともいいます)。
これもまた、組織や仕事が不安定だからゆえのベンチャー企業のメリットだと感じています。そして、ある程度社会人経験を経て、自分のキャリアの方向性がなんとなく定まってきた人ほど、そのキャリアに必要な専門性を高めるような経験が積める、ベンチャー企業に転職すべきだと思います。
安定した大企業から不安定なベンチャー企業に転職することは、デメリットもたくさんあります。しかし、不安定だからこそチャンスがある、不安定だからこそ経験が積めるという切り口で、私が考えるベンチャー企業に転職するメリットをお伝えしました。大企業からベンチャー企業への転職は不安だけど、検討してみようと思うきっかけになれば幸いです。
第1話 ベンチャー企業への転職がキャリアアップに効く3つの理由
第2話 ベンチャー企業への転職で失敗しない「お金」の考え方
第3話 自分はベンチャー企業に向いているか?適性を考える
第4話 ベンチャーへの転職前に解消すべきギャップ(前編)
第5話 ベンチャーへの転職前に解消すべきギャップ(後編)
第6話 大企業とベンチャー企業、それぞれの良い部分
第7話 ベンチャー転職の面接で気をつけるべきこと(前編)
第8話 ベンチャー転職の面接で気をつけるべきこと(後編)
第9話 転職活動で迷ったら、論理だけでなく感性に頼ろう
第10話 転職活動で失敗しないための周囲との関わり方
取材者・平重 克樹 文・ 大久保 崇
提供元・CAREEPOOL powered by DIMENSION