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ソフトバンク、博報堂、トレジャーデータの3社による合弁会社として設立され、2024年で創立5年目を迎えたインキュデータ。企業の顧客データ活用領域における戦略立案やCDP(カスタマーデータプラットフォーム)を活用したデータ分析基盤の構築・運用を支援することで事業変革や競争力強化に貢献。毎年2桁成長、かつ直近2年での年間売上は平均約150%で成長している。

同社による支援の特徴はゴール設定にある。「アイデアが自走できる世界をつくる。」というパーパスを掲げ、目指すところは、クライアント自らがデータに基づいた意思決定とビジネス成果につながるアクションを実現するデータ活用の自走化だ。

大手企業の合弁会社として出発したインキュデータが、明確な独自戦略のもと、クライアントの自走化を見据えるまでに成長した理由とは。代表取締役社長 兼 CEO 町田紘一(以下、町田)とソリューション本部 データサイエンス部 部長 松本淳志(以下、松本)の話から明らかにする。

専門性を活用した事業で成長が加速


「事業創造」「マーケティング」「データマネジメント」と3社の強みを軸に走り出したインキュデータは、トレジャーデータが提供する顧客データ活用を支援するCDPの提供・構築で売上を伸ばしてきた。だが創立から3年後、抜本的な組織再編を実施。強靭な後ろ盾と商材に安住せず、改革の道を選んだ経緯について、CEOの町田は次のように語る。

「組織再編までの期間は親会社からの出向社員の割合が高く、事業としてもCDPの提供・構築に注力していました。また3社による合弁会社であるが故に、組織機能の重複や親会社への忖度もあり、インキュデータ独自の文化や事業をつくれていないことが課題でした。そこで組織を営業部隊となる『ビジネスプロデュース本部』と、実行部隊となる『ソリューション本部』に分け、ワンチームでお客さまの課題解決に邁進できる体制を整えました」(町田)

時を同じくして、町田は積極的な人材確保へと動いた。従業員は約30名から約150名となり、出向者員が大半を占めていた創業時に比べ、プロパー社員が約半数に到達。コンサルティングなど専門的な知見がある人材の増加が事業成長の柱となった。

「お客さまのDXを推進するうえで、必要性を感じていたコンサルティング事業の強化に注力できる体制になり、データ活用の戦略策定やビジネスデザインなど、CDP構築に限定されない支援や、顧客データ活用をワンストップで支援することが可能になりました。その結果、組織再編から2年半が経ち、直近2年の売上は150%に加速。特に、お客さま経営陣とのディスカッションを経て、上流工程から関わる戦略策定などのコンサルティングが、この成果の鍵となっています」(町田)

DXの「あるべき姿」を追求したワンストップ支援


現在、インキュデータの事業内容は「データ活用領域における戦略立案やCDPを活用したデータ分析基盤の構築・運用の支援」だ。

データサイエンス部の部長である松本は、コンサルティング事業を推進するソリューション本部で活躍するプロパー社員の一人。大手Slerの研究開発部門でシステム開発のプロジェクトマネジメントに従事した経験をもつ松本は、専門とするデータサイエンスの研鑽と、クライアントの課題解決に並走できる場を求めて入社した。
 
「これまでの経験から、データ活用は企画から実施までワンストップで支援するべきだという思いを抱いていました。インキュデータでは専門性を高めながらワンストップのコンサルティングが提供できる。自分の専門領域を磨きつつ、ほかの領域のプロフェッショナルから学べる環境は私の理想にフィットしていました」(松本)

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コロナ禍を経て、DXやデータ活用の波がなお高まりを見せる現在、さまざまな業界を横断して顧客支援ができることも価値が高いと松本は言う。

インキュデータは飲食業やヘルスケア、カー用品を扱う大手企業など多種多様なクライアントを支援している。サポート内容はそれぞれ異なるが、支店やセクションごとに管理されていた顧客データを集約し、購買行動や属性などを分析することで、適切なアプローチを行える顧客データ基盤の構築を推進。そのほかにも、顧客コミュニケーション戦略について議論する場としてワークショップの開催を手掛けるなど、支援領域は多岐に渡る。

「現在私が携わっているプロジェクトでは、すでにデータ基盤は導入されているものの活用できていないという課題があるお客様も多く、一緒に課題を一つずつ解消しながら、データ基盤からビジネス価値までつながる仕組み作りをお手伝いさせていただいています。

例えば、まずデータをもとに顧客の購買行動パターンを詳細に分析。その結果を踏まえ、ある店舗で分析を元に設定したターゲット顧客にクーポンを配ったとします。それがどの程度効果があったのか、またどんな配布方法がうまくいったのかなどが分かれば、他店舗にも活用を広げていくことができる。

こうした施策と結果を、インキュデータが構築した顧客データ基盤を通じて社内共有できれば『データを使うとメリットがあるんだ』という認識が社内で生まれ、データ活用の価値を理解していただくことにもつながります。

本来のデータ活用とは、使う側が価値を体感できるかどうかが重要です。そのためにビジネス目線のアウトプットができるよう、日々心がけて仕事をしています」(松本)

 このほか、金融機関からの相談も増えてきているという。金融機関では顧客体験の向上を目指したDXの需要が高い。それを実現するには、顧客データを活用し、最適なタイミングで、最適なコミュニケーションをすることが必要となる。しかし、プライバシー保護の観点から金融機関の持つ顧客データの取り扱いには細心の注意が求められる。

金融機関のDXパートナーとして選ばれるインキュデータは、データ活用とプライバシー保護を両立しながら推進できる点が、高く評価されているというわけだ。

新たな挑戦はクライアントの自走化支援
ビジネス変革を実行する仲間を求める


23年12月、同社は自走化支援サービスを新たな柱として立ち上げることを発表。CDP構築とコンサルティングに自走化支援サービスを加え、三位一体のサービスフレームとなる。

この発表には、インキュデータがクライアントのデータ活用の自走化を実現し、データ活用に基づいた意思決定とアクションの実行を支援するという意志が込められている。

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「日本社会全体の課題として、データの収集からPDCAまでを行える人材が少ないと感じています。今後はお客さまの社内でデータに強い人材を育成し、スキルフルなチームをつくっていきたい。CDP構築やコンサルティングを行う会社が『自走化支援』を実施することは、自らの収入源を減らすように映るかもしれませんが、お客さまを支援するだけではなく、知見を高め合い、アイデアを実現するビジネスパートナーになることが次なる目標です」(町田) 

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DX元年とされる19年から今日に至るまで、多くの企業がDX化に取り組んでいる。国内有数の大手企業を支援するインキュデータは、「DXのその先」を見据え、新たな人材を求めている。

「お客さまのデータ活用から自走化まで並走するには、コンサルティング職の人材確保が不可欠です。弊社のコンサルティングは『ビジネスコンサルタント』『データサイエンティスト』『データマーケティングコンサルタント』など、職種の幅が広いですが、データ活用とお客さまのビジネス変革を目指すという軸は同じです。この軸に共感できる方々と、ぜひ一緒に仕事をしていきたいと思っています」(町田)

「インキュデータでは、お客さまのビジネスを変革するために何ができるかを自分なりに考え、実行していく力が求められます。専門性を活かしながらほかの領域にも興味を持ち、シナジーを生むことを楽しめる人にとって、当社は理想的な環境だと思います。また提案だけにとどまらず、成果にコミットして自らの手で泥臭くデータに向き合い、ビジネス価値の創出に拘っていただける方に即戦力としてご活躍いただきたいですね」(松本)

同社は3社のジョイントベンチャーとして誕生し、出向社員とプロパー社員が互いのバックボーンや専門性を活かすことで成長を遂げた。さらに本質的なデータ活用のため、クライアントの人材育成や意思決定支援まで行う展望だ。

国際経営開発研究所(IMD)が公表する「デジタル競争力ランキング」2023年版によると、日本は64ヵ国中32位。年々順位を下げ、諸外国に遅れをとっているが、逆に言えば、データ活用のスキルをもつ人材が活躍しやすいとも捉えられる。

インキュデータが企業の自走化を牽引し、日本のデジタル競争力を高めるリーディングカンパニーとなることを期待したい。

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文・Honami Kawakami 写真・Daichi Saito
編集・Aya Ohtou(CRAING)

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撮影場所: WeWork 城山トラストタワー