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「いまのAIに感じるのは、インターネットが登場したときを超えるワクワク感です。大げさではなく、これから社会やビジネスのあり方は根本から変わっていくでしょう。電通デジタルはその中心で、変革の先頭に立ちたいと思っています」

トップとしてのコミットを口にしたのは、副社長執行役員の杉浦友彦。すでに具体的な取り組みも始動している。そのひとつが、AI開発とビッグデータ分析に強みを持つデータアーティストとの合併だ。発表されたのは、話題沸騰の生成AI、ChatGPTが登場した2022年11月末から遡ることわずか20日前。AI活用ビジネスの覇権争いが激化していることを物語るスピード感だ。

クライアント企業への提供価値、社内のパフォーマンスなどあらゆる方面で、これまでの次元を超えたスケールアップに動き出した電通デジタル。その未来にはどのような勝算を描いているのだろうか。


「AIを作れる」がもはや強みではない時代


これまでも電通デジタルはAIに力を注いできた。あらゆる接点がデジタル化し、蓄積されるデータ量が膨大になっていく中で、AIの利活用が不可欠な場面が徐々に増えてきたからだ。データアーティストとは5年以上前から協業し、ソーシャルリスティングや広告効果最大化のためのソリューションなどを共同開発している。

そのひとつが、2022年12月にリリースした、広告クリエイティブ制作のプロセスをAIで支援する「∞AI(ムゲンエーアイ)」だ。

Webマーケティングにおける効果予測、改善提案だけにとどまらず、マーケティング上の訴求軸抽出、競合分析、広告コピーやバナー画像の自動生成など、制作のPDCAプロセスも担っていくAIだ。∞AIが業務を効率的に支援することで、クリエイター、UI/UXデザイナー、プランナーなどがそれぞれの仕事の本質の部分で能力が発揮できる環境を作り出そうとしている。

「でも最近、このままの協業体制では“間に合わない”と思うようになってきました。AIの進化スピードがあまりにも早いからです。開発とデリバリーを別々の会社組織の関係で進めていては、どうしても対応が遅れてしまう。データアーティストからも『次の進化の波は相当大きいはず。一気に次元の異なるところまでいくのでは』という声があがっていましたので、危機感を募らせていました」

電通デジタル 副社長執行役員 杉浦友彦

杉浦の言葉どおり、AIの進化は目覚ましい。日々「最新」がアップデートされ、社会受容性も急速に高まっている。AI研究の第一人者である東京大学の松尾豊教授のもとで学び、2013年にデータアーティストを設立した山本覚(現:電通デジタル執行役員)は、開発側として電通デジタルと協業を進めてきた立場から、この1年で感じてきた変化についてこう口にする。

「いままでは、AIを作ること自体を強みにできました。ところが、生成AIがそうであるように、AIエンジニアやデータサイエンティストでなくても、正しく指示ができさえすればプロダクトを作れる時代が目前まで迫ってきています。そうなったら、『作れる』ことの価値は著しく下がり、『何を作る』かが問われるようになるはずです」

AIそのものを作るだけでなく、目的に応じたAIプロダクトを必要とするところへ届けなくてはならない時代へ。そうなると、顧客の理解度やコンサルティングの質が肝となってくる。杉浦が指摘したように、開発とデリバリーが別組織では厳しい。

総合デジタルファームである電通デジタルならではの、豊富な顧客接点を生かす意味でも、合併という形で「製販一体」のAI戦略を進めようと両社が決断したのはむしろ必然だろう。


「製販一体」のAI戦略が社内を活性化する


よく知られているように、「製販一体」は顧客ニーズに寄り添うマーケットインの発想だ。しかし、データアーティストとの合併は、顧客に対してだけでなく電通デジタルの社内にも大きな変化をもたらした。本記事の取材は、合併完了から約3週間後の2023年4月中旬に実施したが、杉浦は「早くもコミュニケーションの濃度が大きく上がっている」と明かす。

「同じ会社になったことで、社内でのAIの話題が一気に増えました。『こんなことはできるの?』『とりあえずプロトタイプ作ってみました』といった思いつきレベル会話を基点としたAI活用のアイデアがあちこちで飛び交っています。これまでと違うのは、AIのプロフェッショナル集団が加わったことで、そういった対話がスピーディにプロダクトへ反映され、顧客への提案につながっていることです」

“アイデアの芽”が1~2日で形になり、顧客へ課題解決策として提示される。このスピード感は、「開発側」にもかつてない刺激を与え、高め合う関係をすでに構築しつつあるようだ。山本はこう話す。

「毎日つくるべきものがあり、毎日チャレンジする環境があることは、社内エンジニアの成長につながります。私自身、毎日社内で『本気の面接』を受けている感覚です。『クライアント企業がAIを使いたいと言っているから』といったある意味で消極的な問い合わせではなく、みんながすでにAIに詳しい状態で、そこから高度な問いを投げかけられるので、かなり頭を使うようになりました」

そもそも電通デジタルはさまざまなバックグラウンドを持つ社員が集まる組織。中途入社社員の出自も多様で、それぞれ異なる強みを持っている。その全てが最新のAIを積極的に活用しているとあって、山本をはじめとする旧データアーティストのプロフェッショナルに寄せられる問い合わせの質は高い。

「AIはクリエイティブのメンバーが主に活用するのではと想像していましたが、経営層を含めあらゆる部署で使われています。とくに驚いたのは、コーポレート部門での活用率の高さです。セキュリティ上、どのような活用をしているかは見えないようになっていますが、問い合わせの内容から、相当使い込んでいることがわかります」

電通デジタルの求人・採用情報を掲載しています電通デジタル 執行役員 データ&AI部門 部門長 山本 覚

だれもが当たり前のようにAIを活用する組織。杉浦は、これこそ電通デジタルがデータアーティストとの合併で目指す姿だったと話す。

「私たちが目指しているのは、『AIの標準装備化』です。AIを特別かつ高度なツールとするのではなく、息を吸って吐くように日々軽々と使いこなす状態を当たり前にしたいのです。そうすれば、各組織に溜まっていた暗黙知的なノウハウも形式知化できます。それをだれもがいつでも取り出せるようにすれば、生産性が格段に向上しますし、いままで以上に高付加価値なサービスが提供できると思うのです」


いまこそ、世界を根本から変えるチャンス


これは、AIエンジニアやデータサイエンティストだけが受けられる恩恵ではない。アカウントプランナーからコンサルタント、UI/UXデザイナー、クリエイティブ、コーポレートまであらゆる職種でより本質的で創造的な仕事に注力できるようになる。また、その人の個性やひらめきがより発揮できる場が生まれてくるだろう。だからこそ、杉浦はいまを企業として飛躍するタイミングだと見ている。

「『AIの標準装備化』を、組織カルチャーや働き方を大きくアップデートできるきっかけにしたいと思っています。データアーティストはモンゴルにも開発拠点を展開していますので、多様な人材の価値観を取り入れてグローバル化の起爆剤にもしていきたいですね」

デジタル国家を目指すモンゴルは数学教育に力を注いでおり、優秀なAI人材が多い。開発リソースを充足させつつ、人材交流によるシナジーも期待できる。単にDEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)を推進するだけでなく、AIを通じて事業成長と密接にリンクしているのが肝だ。

また、あらゆる職種が最先端の進化に携われる状態だからこそ、山本は「これからの人材にはAIが再現できない『豊かな感性』が必要」だと強調する。

「現在、AIはいかに使いこなすかが重視されていますが、少し先にはそれが当たり前となるでしょう。ビジネスの課題解決の方法も提案してくれるようになるかもしれません。そうなると、AIの提案が適切かどうか、端的にいえば『面白いものを面白いと判断できる感性』が重要になってくるでしょう。特に電通デジタルでは、アルゴリズムを作るだけでなく、それをどのように課題解決に応用し、価値として提供できるかまで考えられる人が向いています」

すべての職種で、あらゆる課題への感度を強く持ち、その妥当性を判断できる能力が求められるということだろう。杉浦もこう続ける。

「『責任あるAI』という言葉をさまざまな企業が使うようになってきましたが、今後、AIをめぐる社会的責任がさらに重くなるのは間違いありません。あらゆる権利を侵害せず、何かを傷つけることのないよう留意することが重要です。

それを大前提としたうえで、AIが進化を遂げているいまは、ビジネスのあり方を根本から変えられるチャンスです。われわれが先頭に立って世界を変えていくという決意と覚悟を持って取り組んでいます」

まさに、電通デジタルのパーパス「人の心を動かし、価値を創造し、世界のあり方を変える。」の実現。世界を変えたい、心からワクワクしたい――そう希求する人の活躍できる場所が、ここにある。


杉浦友彦◎1998年に電通に入社して以降、一貫してデジタル領域でキャリアを積む。2022年に電通デジタルに転籍。電通デジタルが展開する各事業領域を統合し、組織横断的に事業価値を創造していくことをミッションとしている。

山本 覚◎東京大学松尾豊教授のもと人工知能(AI)を専攻。AIとビッグデータを活用し、広告の自動生成、広告効果の予測、CROやSEOなど多数のデジタルマーケティングサービスを提供。2023年4月1日より現職。

文・高橋秀和 写真・小田駿一

編集・木原昌子(ハイキックス)

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