キャリアアップ、というと何かを犠牲にせざるをえないようなイメージが強い。だがそれは果たして本当だろうか?
イベント登壇者の吉本明加は、学生時代に出産。子育てをしながら仕事の成果を出し続け、事業責任者を歴任。現在は「自分らしさを発揮し、活躍する」、そんな世界を目指して、個人と企業向けに支援を行うLUF(ラフ)を経営している。
彼女のプライベートには、社会人3年目となった息子との心温まるエピソードを垣間見ることができる。母として、そして一人の人間として、彼女はどのように現在のような「自分らしいキャリア」を築き上げたのか。
人生の転機をキャリアアップにつなげるためのヒントを探るイベント前半では、私たちが力を発揮できない要因と、自らの取扱説明書の作り方について話が及んだ。
後半は、その説明書をもとに考えるべきこと、どういった視点で考えればいいのかについて、吉本が参加者にヒントを授ける内容である。
生きることは、選択肢の連続だ。迷わず決められることもあれば、いつまでも決められず、気づいたら一つの選択肢に流されていることもある。しかし自分らしく幸せに活躍するためには、能動的に選択し続けることが重要だ。
そのために大事なのが、自分の取扱説明書を元に、自分が「どのように生きていきたいか」を考えること。その軸がしっかりしていれば、目の前に選択肢が現れても迷わず選べる。
観点は二つ。一つは自身のキャリア観を確立すること。自分は何がしたいのか、生きがいは何か。どのようなスキル、性格、資質を持っているのか。これらを、時に近しい人に聞きながら見極めると、自身のキャリア観が確固たるものになり、焦ったり安易に投げ出したりしなくなる。
もう一つは長期的な視点をもつこと。短期的な思考だと「今は〜〜だから仕方がない」など言い訳して諦めがちだ。10年後20年後にどうなっていたいか。組織レベルではなく社会レベルでどう貢献していくかまで真剣に考えると、今すべきことが自ずと見えてくる。
突発的なライフイベントや思わぬ生活環境の変化などにより、プランの変更を余儀なくされることもあるだろう。しかし常に考え「どのように生きていきたいか」を明確にし続ければ、軸はブレない。
働き方は以下の3つに分類される。

これはどれか一つに該当し続けるのではなく、ライフスタイルやモチベーションの変動により、タイプを随時変更していくもの。今自分がありたい姿と現実が乖離しているなら、仕事のやり方を工夫したり、部署や雇用形態を変更してみると良い。
「私は社会人2年目までは、どんどん結果を出したくて深夜残業を厭わないビジネス重視型でした。成長スピードは早かったのですが、健康管理が難しく家族との時間を取れないことに悩み、バランス重視型にスイッチし『定時で帰る管理職』になりました」
自分の健康や家族との時間を大事にする一方で、自分の成長や仕事にコミットすることも、吉本は大事にしていた。出勤の電車の中でメール確認や情報収集し、退勤中は読書に費やした。帰宅後は家族との時間を過ごし、寝る前には大好きなドラマを観てリラックス。メリハリをつけたタイムスケジュールを組んで、仕事もプライベートも充実できるように工夫したのだ。
こうした生き方を実現するために、吉本が勧めるのが「24時間の棚卸し」。自身がどんな過ごし方を望んでいるか、時間をどのように使いたいかを考え書き出すのだ。
1週間の持ち時間を100時間とした場合、自分はどのような配分で時間を使うのか。定時勤務の場合「仕事は40%、通勤時間は10%」、育児がある人は「3歳未満の子が一人なら60%、高校生が一人なら10%」など。一人暮らしか、小さい子どもがいるか、介護が必要な人がいるかなど、家族構成によっても異なるので、現状を可視化することが重要だ。
場合によっては、タスクの一部をアウトソースする選択肢を持っておくことも良いだろう。その際は任せる相手の強みやできることを明文化しておくと、お願いしたい業務によって適任者の顔が思い浮かぶようになる。
一方で、スキルアップのためのインプットなど自分にしかできないものは、「この時間は勉強」など、あらかじめスケジューリングしておくことをお勧めする。
過ごし方を考えることは、生き方を設計すること。きちんと整理してタイムマネジメントすれば、自身が望む働き方やライフスタイルが見えてくる。仕事も家事も生産性を高められ、より濃厚な時間を過ごせるようになるはずだ。
自分らしく幸せに活躍するためには、仕事を面白く感じていることが欠かせない。
面白くない場合は、「やらされている」と考えている可能性が高い。上司からの指示にただ従うのではなく、「どういう目的で、誰のためにやるのか」など、その業務の背景や関わる人のことを考えて真剣に取り組めば、仕事はどんどん面白くなる。質の高い成果も出せるようになるだろう。
成果に焦点を当てるためには、広い視野で全体を俯瞰的に捉える必要がある。「自分」という小さな視野ではなく、チームや会社、社会など広い視野で「より良いものを」「より効率的に」アウトプットする方法を考え、目の前の仕事に取り組めば成果は変わるはずだ。
一方で人生には、予想しない偶発的なことも起こる。
1. 好奇心
2. 自属性
3. 柔軟性
4. 楽観性
5. 冒険心
これらを起因とする行動によって起きた変化は、突拍子がなかったり、これまでの経験とのつながりがなかったりするため、「自分にできるわけがない」と投げ出したくなるかもしれない。しかしこれこそが成長の機会であり、チャンスだ。
「誰かを思い通りにすることはできませんが、自分を変えることはできます。そうしたチャンスをものにするためにも、ぜひ自分の取扱説明書を作り、24時間の棚卸しをしてみてください」
自分を正しく理解して自己肯定感を高めること。ネットワークを強化して人との繋がりを増やすこと。色々な人と出会えば自身の長所短所が見えてくるし、多種多様なロールモデルをつまみ食いできる。
時代の変化とともに、私たちは多様な選択肢を持てるようになった。それは自由でありながら、「自分で決めなくてはいけない」という責任も伴っている。流されているだけでは、自分らしく幸せには生きられない。
しかし逆に言えば、能動的に選択肢を選び取っていけば、誰でも活躍できる可能性がある。そのための準備の仕方を、吉本は教えてくれた。