広告やプロモーションの手法が、画像やテキストから動画に転換して久しい。この流れを受け、ビジネスの世界では、動画を活用する動きが隆盛となりつつある。
その牽引者として最前線にいるのが、短尺動画をツールとして活用したコンサルティングサービスを提供しているClipLine株式会社だ。
ClipLineのターゲットは、多店舗展開企業。店舗数が多いだけに、本社によるグリップの難しさや店舗ごとのサービスクオリティーの差など、規模の大きさ故の課題も少なくない。こうした多店舗展開企業の課題を、動画を活用した双方向コミュニケーションツール『ClipLine』を使って解決する。
ClipLineならではの仕事の魅力と、その思いを同社代表取締役社長の高橋勇人に語ってもらった。
ClipLineが提供している短尺動画ソリューションの特徴やメリットを紐解く前に、まずは多店舗展開企業が抱える課題から確認しておこう。
ClipLine代表取締役社長の高橋勇人は、多店舗展開ビジネスにはいくつかの特徴があると語る。
「多店舗展開ビジネスの特徴は店舗数が多いことに加え、人の入れ替わりが多い、本社と店舗の間に距離があるといったことがあります。これは、スタッフの教育や店舗マネジメントの困難さといった課題に直結しています」(高橋)
この課題を解決するためにClipLineが編み出したのが、短尺動画ソリューションという手法だ。
「店舗のオペレーションは、飲食店なら調理、小売店なら陳列方法、サービス業なら接客というように、身体動作を伴うものが少なくありません。これらは、テキストよりも動画の方が圧倒的に伝わりやすいんです。
ClipLineの大きなポイントは、この短尺動画を活用して、いかに多店舗における店舗運営、顧客体験のバラツキを減らし、CSの向上、業績の向上につなげていくか、にあります。そのためには、実は動画が『短尺』であることも非常に重要です。身体動作を覚える際、一度に5分や10分の動画を見せられても覚えられません。そこでClipLineでは、一つの動作ごとに短いもので数秒、長くても2~3分の『クリップ』という短尺動画を作成しています。これが効率的な教育の最適解だと考えています」(高橋)
高橋は、動画を使うメリットはビジネスモデルにまで影響を及ぼすと言う。
「私たちは動画ツールを提供するSaaS企業ですが、その本質はコンサルティングにあります。現代はビジネス環境の変化が激しい時代ですし、多店舗展開ビジネスの業界でも、DXへのシフトや少子化による人材不足といった大変動が起きています。新型コロナウイルス感染症によってオペレーションの変更を余儀なくされた企業も少なくありません。
ClipLineは、単に動画を作成するだけでなく、時代に合わせた企業の課題特定と改善設計を行ないます。クライアントとはハンズオンの長期的なお付き合いになりますし、最終的には財務改善にも貢献できることが当社の強みです」(高橋)
高橋がコンサルティングを重視するのには理由がある。
高橋は、大学時代に生物学を専攻、修士課程を修了した後に、大手コンサルティングファームに就職している。生物学の研究経験というのは意外だが、研究とビジネスは課題解決という点において地続きだと高橋は語る。
「対象が生物から社会にスライドしただけで、課題解決には一貫して興味を持ち続けていました。博士課程に進まず、コンサルティングファームに就職したのも、大学の研究室を出て、広く社会の課題を解決したかったからです」(高橋)
就職当時の高橋は、コンサルティング業務全般に携わる中で、ITを武器にしようと考え、Webベースの大規模システムを構築するプロジェクトを皮切りに、IT戦略立案からシステム設計、開発、テスト、運用までITシステム構築に必要な全てのフェーズを経験した。しかし、ある壁にぶつかる。
「ITについての知見は高まりましたが、直接やり取りできるのはクライアントのIT部門のトップまで。そこに物足りなさを感じました。
経営改善も含めた根本的な課題解決に取り組むには、部門トップではなく経営トップにアクセスしたい。そこで、シックスシグマという方法論を採用していた別のコンサルティングファームに転職しました」(高橋)
シックスシグマというのは、日本型のクオリティコントロールの手法をベースに米国で確立された経営手法だ。シックスシグマが効果を発揮するのは、製品やサービスの質を高く保つことで顧客満足度を高めるようなケース。高橋は転職したこのファームで、多店舗展開の大手外食チェーンを担当し、経営にまで踏み込んだ改革の末、業界ナンバーワンに押し上げるという成果を上げた。
「この案件はうまくいきましたが、多店舗展開企業の課題は業種業態にかかわらず共通しています。多店舗ならではの課題解決のノウハウを横展開できる仕組みがつくれたら、もっと多くの企業の業績アップを効率的に支援できるはず。この着想がClipLineの立ち上げへとつながっていきました」(高橋)
高橋がClipLineを創業したのは2013年。動画の活用はそれ以前から考えていたというが、スマートフォンやタブレット端末の定着に伴い、Wi-Fiを導入する店舗も増加し、ようやくビジネスツールとして動画を活用できる環境が整いつつあった。
少子化による人手不足、人材流動化といった課題が表面化し、多店舗業界がClipLineのようなソリューションを求めていたタイミングだったことも、高橋の決断を後押しした。
ビジネスは一般的にBtoBとBtoCに分類されることが多いが、ClipLineの案件はその両方に向き合うことができると高橋は言う。
「直接のクライアントは多店舗展開企業なのでビジネスモデルとしてはBtoBですが、ClipLineのユーザーは、本部のホワイトカラーだけでなく、現場で働くスタッフも非常に多くいるため、BtoCの発想も必要です。
それに、私たちが消費者として利用する店舗も多く、コンサルタントでありながら自らも一消費者として肌感を持って仕事ができるのは魅力だと思います」(高橋)
店舗スタッフのサービス改善が顧客満足度向上につながり、その結果、企業の業績アップや財務改善が実現するというサイクルこそ、ClipLineのコンサルティングの醍醐味だ。
ClipLineが5年ほど前からコンサルティングを行なっている外資系飲食チェーンの事例を紹介しよう。日本上陸後、順調に店舗数を増やした同社だったが、一時期の勢いの衰えを契機に、新規店を増やすのではなくリピーターを増やす方向に舵を切った。そこで導入したのがClipLineだ。
「経営方針が変われば、オペレーションも研修も全て変わります。このケースでは、経営層と同じ問題意識を持ってコンサルティングを行ない、1年かけて店舗のマネジメント方法とコミュニケーションを変革し、オペレーションを定着させていきました。その結果、顧客満足度が向上、高水準で維持できるようになり、30カ月以上も売り上げを伸ばし続けるという成果を生みました。
ClipLineには動画制作部隊がいるので、動画の内容はスタッフ教育にとどまらず、クライアントの現場の成功事例や顧客インタビューの映像、経営陣からのメッセージを配信するなど、活用の仕方は無限です」(高橋)
一般的なコンサルティングファームにはない動画というツールが自由自在に活用できることは、間違いなくClipLineのアドバンテージとなっている。
新型コロナウイルス感染症は、多くの業種業態の店舗経営に大きな打撃を与えた。多店舗経営で効果を発揮するClipLineにとって、これはマイナスにはならないのだろうか。
「コロナの影響で実店舗の価値は上がっていますし、人はサービスや体験を求めるものなので、ECがどれだけ伸びても店舗がなくなることはないと考えています。ユーザーは、今後ますます接客による顧客体験の良し悪しを重視することになるでしょう。その中でClipLineの役割はむしろ大きくなっていくはずです」(高橋)
ClipLineの導入企業は急増しているが、伸びしろはまだまだあると高橋は言う。
「短尺動画ソリューションを提供しているのは、現在でもClipLine以外にはほとんど存在しません。もっと多くの企業様に知っていただくと同時に、ClipLineを使って財務的成果を上げるような支援をするために、コンサルティングを担当できる人材の強化が当面の課題です。当社には各社の様々なデータが蓄積されてきていることも、コンサルティングをする上で強みであり魅力となっています」(高橋)
最後に、今後の展望を聞いた。
「目標として考えているのはグローバル展開です。日本のサービス業の接客クオリティーは世界的に見ても優秀なので、動画を活用したおもてなしのノウハウは海外でニーズがあると思います。有望な輸出産業になり得るポテンシャルがあるのではないでしょうか」(高橋)
サービス業は、世界的に見てもGDPに占める割合が大きく、ビジネスのメインストリームだ。もしこの目標が実現したら、インパクトがいかに大きいかは論をまたない。
ClipLineは、ミッションとして「『できる』をふやす」を掲げている。先陣を切って動画ソリューションとコンサルティングを組み合わせたことで、企業の経営課題にまで踏み込んで解決を図っているのもその表れだ。
グローバル展開を目指すClipLineの次の「できる」は、世界の接客を変えることなのかもしれない。
文・山口学 写真・小田駿一
編集・木原昌子 (ハイキックス)
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