モバイルバッテリーのシェアリングサービス「ChargeSPOT」を手掛ける業界最大手のINFORICH(インフォリッチ)。2018年4月よりサービス提供を開始し、日本におけるChargeSPOTの設置台数は2022年9月時点で約33,000台を突破した。
ローンチからわずか4年で香港、台湾、タイ、中国などグローバル展開までをも実現させる同社の強みと、今後のビジョン、そして求める人材力について話を聞いた。
INFORICHが誕生したのは2015年。香港人と日本人の親を持ち、日、英、中の3ヶ国語をネイティブレベルで話すCEO秋山広宣(陳 日華)と、エンジニアとして活躍したのち海外のスマホアクセサリブランドの国内展開などを行っていたCOO高橋朋伯がINFORICHを設立し、3年後にChargeSPOTを開始した。
ChargeSPOTとは、日本初、持ち運び可能なモバイルバッテリーのシェアリングサービスだ。“どこでも借りられてどこでも返せる”をコンセプトに、全国の駅や空港、商業施設やコンビニ、公共施設などで展開、今なお拡大を続けている。
モバイルバッテリーのシェアリングは元々中国で展開されており、これにいち早く目をつけたのが秋山だ。
「当時中国ではすでに巨大なビジネスになりつつありましたが、日本にはまだないサービスでした。これを日本向けにローカライズし、我々がスピード感を持って展開していけば、確実にインフラ化できるという確信を持っていました」
秋山広宣 代表取締役社長 最高経営責任者
そこで日本のマーケットに合うものにするためにアプリはどうあるべきか、ハードウェアをどうすべきかなどを徹底的に検証した。
例えばデポジット式だった中国スタイルを日本では後払いに変更し、複数あるペイメントに対応。日本ユーザーが使い慣れた導線にアダプトできるよう改良を続けた。
「我々には香港に30名、広州にも60名のチームがいます。彼らの高い技術力を武器に、スピード感を持ってローカライズできたことがINFORICHの大きな強みだと思っています」(秋山)
さらに日本市場で導入されたのが、ChargeSPOTのアイキャッチにもなっているデジタルサイネージだ。これを活用したDOOHの広告ビジネスも事業の柱となっている。
「ChargeSPOTが47都道府県に設置されているため、全国一斉配信やエリアを絞った広告配信が可能です。過去には、静岡県内を対象とした国勢調査への協力の呼びかけから、全国を対象に新型コロナウイルス感染拡大防止の接触確認アプリの告知広報を展開しました」(高橋)
また、災害時におけるモバイルバッテリーとデジタルサイネージの役割は大きい。
INFORICHでは東京都渋谷区、静岡県熱海市など8つの自治体と防災協定を締結。災害時におけるモバイルバッテリーの無料レンタルや、デジタルサイネージを活用した災害情報の発信などを行う。
「震度6弱以上の場合はバッテリーのレンタルを48時間無料にする仕組みを構築しています。今後は豪雨や噴火、大規模停電、その他の災害でも状況により対応していきたいと思っています」(秋山)
災害により帰宅困難者が街に溢れた時、コンビニや駅などでモバイルバッテリーを無料で借りることができれば、離れた場所にいる家族と連絡がつく。また、誰もがサイネージで現在地の最新情報を得ることができる。INFORICHだからこそ可能となるインフラの確保と情報発信は、今後さらなる強みとなっていくだろう。
INFORICHが創業7年でグローバルに事業を拡大している大きな理由は、インサイトに応えるサービスを可能にする行動力と技術力にある。
モバイルバッテリーのシェアリングで最も重要なのは設置店の数だ。事業をスタートさせた当初は、設置場所を拡大するために「オセロの四隅」と呼ぶ設置戦略を打ち立てた。
「まずはコンビニをはじめとする小売流通と、スマホキャリアのショップといった誰もが充電がなくなった際に駆け込む場所。そして交通機関と自治体。この4つを押さえていきました」(高橋)
電鉄系出身者など、スタッフのバックグラウンドや得意分野を生かしながら人員を配置することで設置場所を増設。それと同時に認知活動も徹底して行った。
高橋朋伯 最高執行責任者
「最初は東京・渋谷を中心に若者向けにアピールしました。いつ、どのタイミングでどのように地域を盛り上げていくのか戦略をたて、テレビCMなどキャンペーンでアピールしながら、対象地域の設置を圧倒的に増やしていく。広告を見て初めて存在を知り、改めて街中を見渡すとChargeSPOTが複数あるという流れを作っていきました」(高橋)
今後はシェアリングサービスの効率化を目指しながら、事業のさらなるグローバル展開を推進していく。
「さまざまなシェアリングサービスを一つのプラットフォームで共有することで、ユーザーがより簡単に、便利にサービスを利用できるような社会を作りたい。
また日本においてはまだマイノリティであるサービスをいち早く見つけ出し、日本に導入する。そして日本ならではの繊細な感覚・思考からサービスをアップグレードさせ、世界に提供していく。これが我々の一貫した、そしてこれからも展開していくサービスのテーマです」(秋山)
INFORICHは執行役員を含め、メンバーも国際色豊かだ。「多様な可能性を見いだし、ボーダレスな価値を育み世界をつなぐ」というビジョンのもと、さまざまな文化、専門性、価値観を持つ優秀な人材が活躍している。
エンジニアは香港や中国に加え、アジアやヨーロッパ、中近東に進出するための現地スタッフも確保している。日本に籍を置くスタッフの中には、日本語が全く話せない人もいるが、コミュニケーションに関して問題はないという。
「主に日本語、英語、中国語が飛び交っていますが、中国語しか話せない人には日本語と中国語がわかる人が通訳になるというように、スタッフがフォローし合う関係ができあがっています。
たとえ相手と言葉が通じないとしても、理解しようという気持ちが大前提にある。些細なことでも理解しようと思い合うことで、そんな視点もあったのかと気づくことができる。これは、言葉が通じる相手でも同じことです。INFORICHでは言語に関わらず“オーバーコミュニケーション”を大切にしています」(秋山)
またINFORICHが掲げる「バリュー」の一つに、多様性を受け入れ、周囲を巻き込みながら誠実に実行することを意味する「Involve」がある。
「新しいことを仕掛けるには渦の中心にいることも大事ですが、ある意味調和も必要です。プロダクトをユーザーに提供するまでには、技術だけでなく、サービスを届けるための営業やマーケティングなど部署を超えた連携が大事になってくる。だからこそ、社内外問わず、周りを巻き込みながら渦の中心となって活躍できる人材を育成していきたいと思っています」(高橋)
最後に、今後どのような人材を求めていくのかを2人に聞いた。
「心に燃えるものがある人には、周りも惹きつけられる。その1人の活躍が会社を動かす力として周りに伝播する。だからこそ、何かしら熱い想いを持っている人と仕事ができたら嬉しいです」(高橋)
「真剣であり、正直な人ですね。真剣であれば何が必要で何が不必要なのかがはっきりする。我々はベンチャーですし、これからも社会に対しどんどんチャレンジしていかなくてはならない。一緒に旗を振ってくれる人が増えれば会社の推進力に繋がる。そういう人材を積極的に採用していきたいと思っています」(秋山)
モバイルバッテリーを軸に次々と新規事業を構築し、ユーザーにとって、また社会にとって何が必要なのかを追求し続ける精神は、国籍を超え、互いを理解し合おうとするINFORICHのカルチャーが大きく影響しているように思える。
「Involve」に込められた想いを共有できる新たな人材と共に、より柔軟で、より強靭なインフラが創造されることを期待したい。
文・石澤理香子 写真・高嶋佳代
編集・大藤文(CRAING)
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