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経営理念に対する本気度、それは会社経営に対する本気度とも言える。

2021年、CUCは新たな経営理念である「CUC Partners Philosophy」を策定した。同社は医療業界に身を置き、医療機関の経営支援や医療ノウハウを活かした国内外の新サービス開発など幅広く事業を手掛ける医療ベンチャーの筆頭格である。

新たな経営理念策定のパートナーに選んだのは、組織や人に関する著書も多い経営コンサルタントの河合太介。

社外の有識者との共創から、新たな経営理念はどのように生まれたのか。

今回、CUCで人事総務部 部長を務める鎌苅亮介も交え、「CUC Partners Philosophy」の策定プロセスを振り返ってもらった。

「経営理念の重要性とは?」、そんなことを感じたことがある全ての人にとって、彼らの歩みは大きなヒントを与えてくれるだろう。


「医療という希望を創る。」を実現するには、理念という“道しるべ”が必要だった


“医療とは本来、人々に安心を、社会に進歩をもたらす希望であるはず。その本質が揺らいでいる今、よりよい医療を追求することによって、一人でも多くの人が心から安心できる社会を作りたい”

CUCの経営理念には、このような強い想いが込められている。
それは創業時から今までも、そしてこれからも変わらない軸だ。

では今回、なぜ理念を新しく見直す必要があったのだろうか。人事総務部 部長の鎌苅は、企業規模の拡大を理由に挙げる。

これまでCUCグループには、歴史背景の異なるさまざまな会社がジョインしてきた。支援先の医療機関も日本全国に続々と増え、ともに社会に求められる医療を創ろうという仲間は、着実に増えている。

その一方で、その仲間たちと同じ方向に向かって歩んでいくためには、どのような行動や考え方が適切かを定めた「共通の、ものさし」が求められていたという。

共通のものさしの必要性を、鎌苅らは現場視察を通じてさらに実感することになる。

「我々が関わった医療現場の中には、残念ながら患者様にきちんと向き合った医療を提供できていない現場もありました。そういう職場は組織が硬直的で、意見が通らないことも多く、『患者様のために働きたい』という高いモチベーションを持つ人が次々に去ってしまっていたのです」(鎌苅)

これでは「医療という希望」は決して生み出すことができない。この状況を変えるために、CUCとCUCが支援する医療機関が目指す医療のあり方をメッセージとして発する必要がある。

そう考えた同社は、CUCとグループ企業、支援先の医療法人に関わる人全てが「患者視点の医療の普及」を本気で目指せるようになるために、新たな理念をつくる決意をしたという経緯だ。

「CUC Partners Philosophy」の策定に外部から携わった経営コンサルタントの河合は、「経営理念とは目指す組織のあり方を実現するための“道しるべ”」だと説明する。

「私はこれまで30年ほどファーストリテイリングに関わってきた経験があるのですが、あの会社がここまで成長できた根本には『服を変え、常識を変え、世界を変えていく』というミッションがあったからです。

その道しるべがあったからこそ、世界に通用する新しい価値の服や店を生み出すことができたのではないでしょうか。経営理念という一本貫くものができたときの組織の強さは、計り知れないものがあります」(河合)

CUCの求人・採用情報を掲載しています経営コンサルタント 河合太介


「専門性の前に、人間性」──治療だけが医療の価値ではない


「CUC Partners Philosophy 」の作成に先立ち、河合は代表取締役の濵口慶太との対話を重ねていた。事業部のコアメンバーにもグループインタビューを行ない、出てきた言葉をもとに要職者を中心とするチームでディスカッションを行なった。

「CUCをどんな会社にしたいのか?」「自分たちは何を大切にしているのか?」

自由に意見を出し合った意見を形にしていく。その工程には約3カ月間を要したという。構造が浮かび上がってきた段階で、事業部の責任者にも広く意見を聞き、言葉をブラッシュアップしていった。

明るい雰囲気の中、議論は穏やかに進行していた。しかし、ある言葉の表現がテーマになったとき、今までになく議論は白熱した。その言葉とは──。

「『専門性』の前に『人間性』を重視する、という言葉です。医療専門職の多くは、専門性を磨くことを極めて大切にしています。それを考えると、この表現は現代医療を支えている方々を否定していると受け取られかねません。強い表現を選択するには、覚悟が必要でした」(河合)

もしかすると、この表現が原因で医療職の心がCUCグループから離れてしまうかもしれない。その危険を冒してでも、「人間性」の重要性を打ち出すべきか。

この議論をしている最中、鎌苅の脳裏を、あるエピソードがよぎった。それは医師の「人間性」がもたらす効果を目の当たりにした出来事だった。

「訪問医療の現場に研修で訪れた際、ある患者様が『先生、私、治療に疲れた。もう、いい』と仰ったんです。すると先生は『何言ってるの、次の夏に娘さん帰ってくるじゃない』とすかさず返答しました。それを聞いた患者様は『そうね、私も頑張らなきゃね!』と声色が変わるほど元気になったのです。

そのやりとりは、いわゆる医療行為ではないのかもしれません。でも私は、そうした会話の一つ一つに価値があると感じました。治療や診療だけではなく、応対でも患者様の生活を支えていく。そうした姿勢が、医療という希望を創る上で極めて大切だと思ったのです」(鎌苅)

医療とはサービス業でもある。

患者と向き合った医療を提供するためには、医師であろうと、いや、医師だからこそ、人間性を兼ね備えていなくてはならない。そう感じていたのは、鎌苅だけではなかった。

言葉を選択する過程で、医師や看護師、理学療法士など、パートナーとなる医療専門職と対話を重ねていた。そこでもらえる言葉は、共感がほとんど。

医療業界における専門性と人間性の両立の重要性への課題感とともに、あるべき姿を確かめることができたのだ。


“忖度なし”の話し合いから生まれた、目指す未来へと導く言葉の数々


そしてメンバーたちの強い意志のもと完成した「CUC Partners Philosophy」は、2021年4月にようやくお披露目の日を迎えた。

自分達にとって正しいと胸を張って言えることを盛り込めたという自負はある。しかし、どこまで受け入れてもらえるだろうか。正直、怖さがあったと2人は振り返る。

しかしその不安は公開後、あっという間に吹き飛んだという。

「支援先の医療機関のある医療職の方がこんなことを言ってくれたんです。『僕が今まで勤めていた病院は、オーナーが右と言ったら右しかなかった。でもCUCでは『CUC Partners Philosophy』が上司ということになる。

これからは“新しい上司”のもとで、自分が最適だと思う医療を患者様に届けていけば良いんだね』と。自分たちの意図が伝わったと感じられて本当に嬉しかったです」(鎌苅)

CUCの求人・採用情報を掲載していますCUC 人事総務部 部長 鎌苅亮介

河合は、他のどの会社にも似ていない、唯一無二のものができたと、「CUC Partners Philosophy 」の出来に納得の様子だ。

「実は世の中には、どの会社でも使えるような表面的な経営理念が多いんです。でも『CUC Partners Philosophy』には、CUCらしさが、色濃く織り込まれています。もし、社名が切り取られた紙切れの状態で落ちていたとしても、中を見ればすぐにCUCのものだとわかると思いますよ」(河合)

オリジナルの経営理念ができたのは、忖度のない意見交換ができたからだと、河合は認識している。第三者としてCUCに携わる中で河合が感じてきたのは、CUCの「人」の魅力だった。

「代表取締役の濵口さんは、非常によく人の話を聞く方です。自分の考えは持っていても、無理に引き寄せようとしないので、周囲のメンバーは自分の思っていることを素直に話せていました。その際も、聞き手が聞き入れられる心地よい言葉選びができるのはさすがだなと思いましたね」(河合)

納得のいく経営理念はできた。しかし、ここで安心はしていられない。大切なのは、それをいかに社員の日常へと落とし込んでいくか、だからだ。

鎌苅は濵口代表からのメッセージの機会を増やすことに加え、会議の冒頭10分を使い、社員にフィロソフィーにまつわるエピソードを語ってもらう機会を設けているという。単に話を聞くだけではなく、自分の言葉で語ることによって、新しい経営理念を自分のものにしてもらう狙いがあるという。

目指すのは、誇りとやりがいに溢れる職場づくり。それが患者様に対するサービスの品質向上につながると鎌苅は信じている。

グループを束ねる強い芯を手に入れたCUCに、河合が寄せる期待は大きい。

「CUCとは『Change until Change』の意味です。『CUC Partners Philosophy』という一本道を進んだ先で、社名の通り医療業界を変革する第一人者になってほしいですね。そうすれば、私たち市民はものすごく幸せになるでしょう」(河合)

困難は多いかもしれないが、迷いはない。グループ一丸となって歩むと決めた道の先にはきっと、「医療という希望」を届けられる未来が待っているのだから。

文・一本麻衣 写真・阿部 吉泰(ブロウアップ)

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【編集後記】 編集・後藤亮輔(Forbes JAPAN CAREER 編集長)

いい会社とは何か?
法人である限り営利をある程度は追求しなければならない。
そして同時に、従業員の人生を預かっているからこそ、彼らのやりがいや生きがいも見つめなければいけない。

従業員を大事にするがあまり、売上を落とした会社、というものは基本存在しない。
多くの会社で起こっているのが、従業員がいつの間にか辞め続けていくケースである。

もちろん、待遇などの不満が原因のものもあるだろう。ただ、大半がカルチャーであり働く理由を見失っているケースが多い。

「自分のこの仕事は、誰のためのものなのか。この会社にいて、幸せになるのだろうか。誰かを幸せにできているのだろうか」

キャリアの分岐点に立った時、人は、自分の哲学と会社の哲学を照らし合わせる。
ただ、多くの会社に実は明示化された哲学が存在していない。だから人は出るという道を選ぶ。

行く先が記された道と、そうでない道。あなたならどちらを選ぶだろうか。
フィロソフィーとは、道しるべなのである。