コンサルと聞けば、多くの人が大手の名前を想起するだろう。

当然、大手以外にもコンサルティングを生業としている企業は日本に数多と存在するわけだが......彼らは大手といかに差別化をし、自分たちのフィールドを築き上げているのだろうか。

異業種の垣根を越え、あらたな価値を創出している、Gran Manibus(グランマニブス)という企業がここにある。

まだメンバーは20名ほど。ただ、大手に匹敵するプロジェクトを幾つも担い、そして住友商事グループであるSCSKの傘下にも属するなど、企業規模に対しての実績、そして財務基盤は他社を圧倒する。

飛躍的な成長を遂げた理由。そのヒントは、ダイヤモンド組織。そして代表取締役社長のミゲル アンヘル エステベス アベ(以下、ミゲル)の哲学にあった。

「人と同じことをしていては、価値は見出せない」


父はスペイン人で母は日本人。東京生まれの東京育ち、インターナショナルスクールに通うこともなく日本の学校を出たミゲル。慶應義塾大学を卒業後、アンダーセンコンサルティング(現・アクセンチュア)に就職。2年後には退職してスペインに行ったものの、帰国して父の貿易会社を手伝うことに。その後、再びグローバルを見るべくアクセンチュアに入社した。

「採用のシーンでは事実ベースで語られにくい。でもその程度がわかる意味では、アクセンチュアは安心だから」

言葉に飾りのないミゲルらしい言い方と、物事の捉え方である。アクセンチュアでは金融グループのコンサルティングを担った。当時では珍しかった、資産運用会社などを担当するキャピタルマーケットの分野だ。

「人と同じことをしていては価値を見出せない」、ミゲルの根本にある姿勢である。

その後、コンサルティングファームのヘッドストロングに移る。

アクセンチュアはグローバル企業であるが、国を越えた仕事に携わる機会は少ない。それに対してヘッドストロングではグローバルな関係を構築できるからだ。

シンガポールや香港を舞台に、アメリカ系・ヨーロッパ系の保険会社、銀行、投資会社らをクライアントとし、並走した。そして、アジアンフロンティア(現・グランマニブス)創業に至る。

経営・ITコンサルやAI技術など、先端技術を活用したビジネスソリューションを提供するグランマニブスは、後に、住友商事グループのシステムインテグレーターであるSCSKから出資を受けることとなる。


全ては消費者に帰結する。だからこそ、消費者目線であるべき


経歴を聞けば“越境”の連続である。自身は意識してはいないと言うが、結果として越境が続いた。

「境目を乗り越えることに価値を感じています。その時に、『世の中の誰かの役に立つんじゃないか』と感じるからです。私は、日本とスペインの文化の中で育っているので、境目を感じることが多い。また、旅好きもあってか、人間の本質を考える機会が多かった」

本質とは何か。

真っ白なホワイトボードにミゲルが黒い丸を描いた。非常に小さな丸だ。これについて「何が見える?」と、ミゲルは問いかける。

大きなホワイトボードに描かれた小さな黒丸。特に正解があるわけではないと前置きされたが、一般的には黒の丸があると言いがちであろう。

「こんなにも白いスペースがたくさんあるのに、なぜ、黒を見てしまうのか。それは人間は異質なものにしか目がいかないからなのです。当たり前のようにあるから違うものが目立つ。でも、これは仕方のないこと。

大事なのは、常に自分を振り返って、『木を見て森を見る』のではなく、『森を見る』という視点を広げる必要があります。常に森を見られなくてもいいのですが、自分を問いなおす時に見えなければいけません。ですので、常に『問い直し』の姿勢があるといいですね」

が、故に、人生はそのままの自分でいいとも語る。それぞれの役割は決まっているから飾らずに生きる。人のせいにしたり、嘘をついたりしなければ、問い直しでうまくいく。同社の採用基準もこのあたりを見ているという。コンサルの仕事では、最後に受ける消費者のことを考えて着想しなければならないからだ。

「人が生きるために必要なもの以外をつくる仕事はない。だから、最後は消費者に帰結するんですよね。ここを見間違うと、目的を履き違え、無駄なものをつくってしまうことになる」

20人規模で、大手に匹敵するプロジェクトができるワケ


ここまではミゲルが持つ哲学を紹介してきたが、改めてグランマニブスの事業、そして組織に着目しよう。

彼が標榜するのは「社会に価値あること(Social Value)をビジネスで生み出す」ということ。

ITコンサルティング、経営コンサルティング、プロジェクト管理支援事業を軸とし、机上の空論ではなく、クライアントの事業に踏み込み社会的価値を生み出すのが同社の特徴であり、あるべき姿だ。

担う領域は広い。金融・通信・小売・メディア・製造業などで、サービス・事業創出を行なう。ITやビジネスコンサルティングをベースにしつつ、ディープラーニング技術を中心としたAI関連技術を産業に応用することで、新たな価値をクライアントに提供している。

20名規模の会社ではあるが、大手コンサルと同等のボリュームをこなしている。その背景には「ダイヤモンドシェイプ」という仕組みがあった。

同社にはミゲルだけでなく、アクセンチュアでパートナーの経験も持つ代表取締役の宮下国之と、IBMでクライアントパートナーの経験を持つ同じく代表取締役の神原公一が経営に携わる。

上層部の知見は豊かだ。ただ、大企業並みに新卒採用を行なってOJTを入れるというモデルは現実的ではない。ここでダイヤモンドシェイプが重要となる。

大きな企業では上層部が少なく、新入社員が多く、大きな三角形になるが、同社ではその三角形からダイヤモンドの形を抜き出したような構図となっている。頂点の上層部は同じだが、徐々に広がる三角の辺は、ちょうど真ん中で折れ曲がり逆三角形を描くようにしぼむ。まるで、ダイヤモンドのかたちだ。

では、余った両端の三角はどうなるか。ここは外部のビジネスパートナーに委託する。プロジェクト単位での契約になるため、経営管理のオーバーヘッドコストがかからない。その分、マネージングを担当する上層部がクライアントのために十分な時間を確保できるのだ。

しかも、常に常駐という策をとる。大手コンサル会社ではあり得ないことだ。若い世代が経験を積むために常駐するのとではわけが異なる。10年以上の経験を持つ猛者が常駐することでクオリティの高い成果を出す。

大手にない魅力はこれにとどまらない。経験値の高い人と実際の現場で働くことができ、そこから学べるのだ。大きな組織になると上層部までの距離ができてしまうが、同社にはこれがない。

また、事業を大きくするためにSI(System Integrator)に繋げないことも特徴の一つだ。なぜなら親会社であるSCSKがその領域だから。SCSKと業務提携して2年、連結に入ってから1年、双方に非常にいい効果がでてきたと振り返る。SCSKの営業を部分的に代行することもあるようで、グループ会社として事業のフロントに立つシーンもある。


あなたの経験は、確実に新たなビジネスのデザインに繋がっていく


グランマニブスでは総合コンサルティングを軸に、ディープラーニングやIoTなど技術革新の波を捉え、コンサル業務の一端にしている。また、今後はビジネスデザインチームを立ち上げることも想定。まさに住友商事やSCSKの戦略をリードしていく、“ブレーン”となることが期待されているのだ。

「ビジネスデザインの領域には、コンサルのノウハウだけが必要なわけではありません。ベンチャーや事業の立ち上げ経験者や、広告代理店でプロジェクトを動かしている人でもいい。エンジニアも必要。ビジネスデザインの狙いは、エコシステムで考えています。世の中のバリューチェーンは業種ごとでしたが、新しい事業価値を作るには、飛び越えなくてはいけません。今後は、コンシューマーマーケティングにおけるデジタルリテールの領域も目指します」

その他にも軸が3つある。「デジタルヘルスケア」「モビリティ」「フィンテック」だ。

最後に改めて、彼らが必要としている人材を問うた。

「他者にどのような価値を提供できるか。それを追求できる集合体がソーシャルバリューです。クライアントの課題はなにか、答えはなにか、それを作るのが我々です。生活をするためにビジネスをしているわけですから、持続可能なかたちでソーシャルバリューを提供していく。

会社として目的やゴールを共有する以外は、自分でやりたいことを持ってきてください。自分で考える。そこでの失敗は全て私が負うから気にしないでください。より活躍できる場をつくるのが社長ですから。その中で、私は自律心を求めます。何のためにやってどんな価値を提供するのかを問います。そこを突破して働ける人は活躍できると思います」

文・上沼祐樹 写真・小田駿一


【編集後記】

文中にもあるが、突然、ミゲルが我々に「問い」を投げかけてきたときは驚いた。
まるで我々が、「それは黒い丸である」と答えるのをわかっていたかのように。

彼の言う通り、人は異端に目がいく、良くも悪くも。
ただ、異端という存在は面白く映るが、自分の身近なところに置くには、皆、少し気が引けてしまうのではないだろうか。

皆、同じがいい。だから、皆と同じような選択をする。

昔のミゲルもそうだっただろう、ただ、彼はいい意味で突き抜けた。
だからこそ、ダイヤモンド型の、まさに異端の組織を作りあげることができたのだ。

人はどこかで他人と同じことを嫌う。
では、他人と差別化するにはどうすればいいのか。その答えについて、ぜひミゲルと直接会って、喧々諤々と話し込んでみて欲しい。

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